冬菜かしこの「ジムと畑とボランティア」の日々

二人娘は小学生、アラフィフママのどたばたな毎日の記録。

【エッセイ】夫婦でランチ

二人娘がともに療育の日、

朝の9時半には家を出かけたのだ。

さてさて。

残ったのは主人と私。

それぞれぼんやり過ごしていたのだが、

庭に出ていた主人が駆け寄ってきて、

「お昼ご飯、外食しない?」と提案してきた。

 

数日前からそれらしきことを言っていたので、

やっぱり行きたいのねと思い、

「いいよ」と返事をすると、

「A店は、どう?」と聞いてきた。

「前から行きたいって言っていて、

でも、子供たちの予定がいろいろ入って、

なかなか行けなかったから」

と私の以前からの提案のフレンチのお店を提案してくれた。

 

出来ることなら、最初は家族4人でわくわくしながら、

初めてのお店を楽しみたい。

だから、

「うーん、子供たちと行きたい」

と言ってみた。

 

「子供たちと一緒に行く前に下見として行ったらどう?」

を主人がくいさがるので、

そこでようやく、自分が行きたいのだな、と気づいた。

 

もちろん最初は私のためを思って考えたお店だと思う。

子供の予定がいろいろ入ってきて、なかなか行けなかったのも事実。

でも次第に主人自身がそのお店に興味を持ってしまい、

行きたくなったのだと思った。

 

それでもやはり私がしぶっていると、

別案として、「じゃあ、おばんざいのB店はどう?」と

譲歩してくれた。

 

このお店も私が興味を持って、

「いつか、行きたい」と言っていたお店。

お惣菜のお店なので子供はあまり好きじゃないかもしれないので、

主人と二人で行きたいと思っていたお店です。

すかさず「B店がいいね」と言って、

お昼のお店が決まった。

少々、テンションが落ちたような主人。

それでも私はこの決定に満足していた。

 

でも。

ふと、気が付いた。

最近、仕事が忙しくてばたばたしていて、

職場で緊張感を持って働いている、と言っていた主人。

新しいお店周りが好きな主人。

鶏のから揚げが好きな、お肉大好きな主人。

 

どこからどうみても、今日行きたいのは、A店のはずな。

ここ数日は疲労の為、ちょっと怒りっぽくなったいた主人の気持ちを、

ないがしろにしていいのだろうか?

 

結局。

「やっぱり、A店がいいんじゃない?

あなたの提案は、わりと勘がいいことが多いから、

そっちのお店の方がいいんじゃないかな?」

そう言って、フレンチのA店に行くことにした。

相手を説き伏せて自分を通しても、

あまりいいことにならないような気がしたのだ。

 

電話で12時30分に予約をして、いざお店に行くと、

小さな建物の小さな店内に、

たくさんの人がいらっしゃった。

テーブルは5つ、カウンターは5席、

ほぼほぼ埋まっていて、店内はおしゃべりな女性の声で、

ずっと、わいのわいのしていた。

 

何がそんなに面白いのか笑い声が絶えず、

何をしゃべることがあるのか、

一向に会話が途切れることもなく、

ずっと、ずうっと、にぎやかに、

心地よいうるささに包まれていた。

 

キッチンはオープンだったので、

料理をする音も混ざっていたと思う。

小さな店内の音楽も一応聞こえている。

それでもそれを超えて、

女性客のにぎやかさが圧倒的な熱量を持って、

店内をあたたかくしていた。

 

「ああ、今このお店にいる人達は、

このお店が好きなんだな。

だから、こんなにも、リラックスしているんだな」

そんな風に見えたのだ。

それがとても心地よく、

なんだか気分が良かったのだ。

 

最初に出てきたアラカルトは、

小さな一口サイズのお料理の盛り合わせで、

生ハムやマリネやパンやサラダが並んでいた。

どれを食べてもとてもおいしく、

お手頃ランチでこんなにでしてもいいの?

と、こちらが心配するクオリティ。

次にでてきたスープのしっかりとした濃厚スープで、

中心にある生クリームもあいまって、

とてもおいしかった。

メインの鶏肉のクリームには、

少々濃い味付けだったが、

鶏肉が柔らかく、かたわらの温野菜もほどよい蒸しかげんで、

量もしっかりあったので、

お腹いっぱいになった。

最後のデザートのチーズタルト、カシスアイス、も甘すぎず食べやすく、

コーヒーはブラックが苦手な私も思わずブラックでいただくほど

のど越しの良いおいしさだった。

 

主人と二人して、ランチコースを堪能し、

さあお会計と言う時、主人が財布を出したので、

それを制して「私のおごりで」と言って、支払いをした。

少し驚いたようでしたが、やはりうれしかったようで、

主人は少々機嫌が良かったように思う。

 

今の私は専業主婦で、

大体考えることの大半は「節約」のこと。

何をどう節約するや、何をどう我慢するか、何をどう自分でやるか。

そんなことをよく考えている。

でも最近は少々変わってきていて。

「まあ、いっか」という時も増えてきた。

あまりにもそればかりだと、息苦しいということに、

自分で気づいてしまったのだ。

 

だから今日も私のおごりと、決めた。

それで主人が喜ぶなら、安いものだ。

少々のことで大切なものを失う前に、

少々のことは、少々のことだと、

気づくことが大切だと思ったのだ。

 

無駄遣いはもってのほか。

それはよーく分かっている。

でも、それを分かった上で、

無駄ではない何かのためにお金を使う。

それはきっと、大切なことなのだと思うのだ。

 

節約に疲れたら、

「金は天下のまわりもの」

だということを、

思い出すことにしようと思っている。