先日、近くのスーパーで苺苗を購入した。
例年は自前で苺の苗を作るため、お店で苺苗を買うことはない。
ましてやこんなに、15株も購入することなどありえない。
1株198円。
主婦の私にすれば、決してお安くはないこの苗をこれほど購入したのは、
6月の入院から続く一連のバタバタで、畑仕事がすっかり出来なくなっていたせい。
仕方ないと言えばそれまでだが、
もしも苗を買うことで、畑仕事がまたいつものように楽しく再開できるならばと、
えーい!と思い切って買ったという次第なのだ。
本当は市民農園の畝づくりも、腰を痛めるよりは、
「何でも屋さん」にお手伝いを依頼した方がいいのかも、と思っていた。
無理して畑仕事をして腰を痛めて再入院するよりは、
外注した方がいいのかも、などとも思っていた。
でも、短時間でちょっとずつすれば何とかるかもと思い直し、
なんとか自分でこなした。
一気にすると体に悪いので、三日間くらいに分けて、
少しづつ、ゆっくりと、くわで畑を耕していった。
雑草を刈ったものを畑の上にかけていたので、雑草が発芽しにくいのと、
秋も深まってきたので、雑草の成長も遅いのとで、
たいして大きい雑草は生えていなかった。
畑一面に被せていた、乾ききった雑草をくわでよけると、
そこにはふかふかな畑の土が顔を出し、
「いつでも植えられますよ」とでもいうように、
きれいな茶色をしていた。
しばらく「自然農法」を目指していた私なので、
このふかふかの土は紛れもない「自然な土」であり、
出来ればそのまま使いたいと思っていた。
でも今回は考え方を変え、少し牛糞をいれた。
本当はそういう人工的なものを入れない方法にしたかったのだが、
今の私にはそこまでの体力も気力もないのだ。
純粋な自然農法はどうしても野菜の成長がまばらで、
きちんと食べられるものに育つ保証もない。
元気いっぱいな時ならそれでも、
「まあ、いっか!次頑張ろう!」となるのだが、
残念ながら今の私にはそういう気力はない。
牛糞をいれることで、確実に野菜がすくすく育つなら、
その方法をとろうと思っているのだ。
自然農法の、しんどい、「雑草を刈ってまいておく」という方法は、
少しあいだ、休んでもいいかなと思っているのだ。
あまり完璧を目指さず、
今できることをぼちぼちと、
楽しみながらやっていきたいと思っている。
さて、今の市民農園には、いつのまにか生えてきた、
巨大すぎる一本の小松菜が鎮座している。
「白菜かな?」と思っていると、
隣の区画のおばちゃんが「それ、小松菜よ」と教えてくれたのだ。
「外側は固いけど、中は食べられるでしょ」と言ってくれるものの、
「うーん、大丈夫?巨大すぎない?」としり込みしている私。
それでも、畑に畝を作り、苺苗をこれでもかと購入し、
本格的に畑仕事を再開しようと意気込んでくると、
「物は試し、食べてみよっかな?」などと気が変わってくるから不思議。
あまり味は期待しないようにして、
ちょっと茹でてみようかなと思っている。
小松菜の反対側の畝には、なぜかキャベツが3つほど育っている。
こちらは巨大ではなく、普通サイズのキャベツ。
もちろん、今季に植えた記憶はなく、
おそらく前期に植えたものの根が残っていて、
再度育ってきたのだろうと思う。
6月の入院で、だめになってしまったと思っていたキャベツ。
まさか再度育ってくれるとは思ってもみなかった。
もちろん、きちんと結球してきれいな形に育つことまでは、
期待してはいない。
それでもキャベツの形を見せるほどには育ってくれたことが、
なんだか思いがけないいたずらのようで、
それはそれでなんだかとても面白かったのだ。
「素敵なサプライズ」
畑仕事のたびに感じる、
畑仕事をする者だけが感じられる、
素敵な贈り物。
実は今回。
苺を購入した時にスーパーのレジの店員さんに声をかけられた。
「楽しみですね」と。
一瞬、何を言っているのか分からなかったのだが、
店員さんが苺苗のそばでにっこりとしているのを見て、
「ああ、苺苗ね」と分かった。
「いつもは自分で苗を作るんですけどね」
私がそう言うと、
「ああ、ランナーを作って、ですね」
と店員さんが言い、
「はい、そうです。今年はちょっと作れなくて」
と私が弁解をして、話は終わった。
なんということはない普通の会話。
でもいつも行っているスーパーだが、
こんなに軽く会話することはなかったのだ。
淡々と買い物かごを差し出し、
淡々とレジ業務をしてもらうだけの関係。
それでも今日はなんだか思いがけず、
ほっこりとした会話をし、交流してしまったのだ。
「魚心あれば水心」
畑仕事をしているのだと分かれば、
それを理解している人は、心を開いてくれるようだ。
それが今回はとても心地よく、
楽しい気持ちにさせてくれた。
もしかしたら、そんなものなのかもしれないね。
きっかけがないだけで、
意外とみんなはつながれるのかもしれないね。
それに気づいただけで、今日はちいさな収穫を得られたような気持ち。
天気予報では、また雨が降るそうだ。
明日なのか、数日後なのか。
ひとまずそれまでに、大量の苺たちを畑に植えて、
春に備えておこうかと思っている。