冬菜かしこの「ジムと畑とボランティア」の日々

二人娘は小学生、アラフィフママのどたばたな毎日の記録。

【エッセイ】6月の入院(その4)

さて、入院中のお話。

 

緊急入院した中規模の病院で、

私が運ばれてきたのは症状が重たい病棟。

最初に、圧迫骨折かもしれない、とのことだったので、

そういうことになったようだった。

「何人部屋にしますか?」との質問に、

迷わず大部屋を選び、4人部屋へと入った。

 

一人部屋だと、差額ベット代が一日1万円、

二人部屋だと、差額ベット代が一日3~4千円、

四人部屋だと、差額ベット代が無料、

と聞けば、どうしたって主婦の私は、

四人部屋を選んでしまう。

14年前の入院の時も四人部屋だったし、

その時もそれなりに同室者と仲良くしていたので、

今回も同じようにしたい、という気持ちもあった。

 

私のベットは窓際で、実際の広さよりも開放感があった。

4階だったので見晴らしも良く、

各ベットはカーテンで仕切られているし、

テレビはイヤホンで観るきまりらしく、

大して生活音の不快さはなかった。

 

一日目は、腰の痛みが頂点だったため、

出来るだけ動かないようにしていた。

ベットに横になったらそのまま。

テレビを観ようという気も起らず、

本を読もうという気も起らず。

ただごろんと横になって、

ただ時間だけが過ぎていった。

入院は経験があるのでそれなりに覚悟はしていた。

でも今回の入院が前回と違うのは、

スマホがある、ということだった。

メールやラインや電話で、

知人や家族と連絡が取れる。

それはものすごい喜びでした。

実家の母に電話して、腰の痛みを訴えて、

圧迫骨折経験者の母は私の痛みに共感してくれた。

直に電話で声を聞いて励ましてくれることが、

これほどまでに力が出るとは、

本当にありがたかった。

 

さて、カーテンで仕切られていたとはいえ、

病院にいた、2人のおばちゃんたちの声や生活音は、

ほとんど聞こえてきた。

隣のベットのおばちゃんの看護師さんとの会話も、

私の「いったーーーい!」の声も、

しんと静まった部屋では、ものすごくよく聞こえた。

そのうち隣のおしゃべり好きなおばちゃんが

私に話しかけてくれるようになり、

斜め向かいのおばちゃんが

気にかけてくれるようになった。

 

特に隣のおばちゃんは膝の人工関節の手術をしたそうで、

もうすぐリハビリ病棟に行くほど元気なので、

よくお話をしてくれた。

そのほとんどがたわいもないお話。

毎日どこにお買い物に行くだとか、

うちのけんちん汁は評判がいいのだとか、

まだ車の運転がしたいのよだとか。

 

私の母と同い年だというそのおばちゃんは、

娘さんが大手銀行務めだとか、

娘さんの旦那さんが学校の先生だとか、

今は亡き旦那さんは地元で信頼の厚い公務員だったとか、

お葬式はとても盛大にしただとか、

とても自慢が好きだった。

でも。

そういうの分かるのだ、その気持ち。

14年前の入院の時も同室のおばちゃんは、

家族の自慢話が好きだったから。

年を取るといろいろと自慢したいのよね。

それはきっと、

将来年を取った私も通るだろう道。

だから、いいのだ。

存分に自慢してください、という気持ちで聞いていた。

たぶん私の実家の母も、

同じ状況になれば、

家族の自慢話をするのだろうから。

それはごくごく、普通の事なのだろうなと思ったのだ。

 

一日目は、寝たきり状態で背中が痛くて仕方なかったのだが、

二日目は、まだまだ激痛で、寝たきり状態ではあるものの、

ベットのリクライニングを45度ほど起こし、

背中に枕を入れればなんとか、料理を眺めながら、

食事が出来るようになった。

とはいえ、まだまだ手づかみですべての料理を口に運んだ。

汁物は飲めないので、パックの牛乳のストローを使って、

味噌汁の汁のみ飲んだ。

味噌汁の具はあきらめた。

そんなこんなで二日目は過ぎていった。

 

三日目は、ずいぶん激痛が緩和され、

「なんとか耐えられる痛み」に移行していった。

味噌汁もゆっくりとお椀を口元に運んで、

なんとか飲めるようになった。

汁物を含め、食事が完食できるようになると、

少し前進したように感じた。

 

四日目は、リハビリが開始された。

三日間の寝たきり状態でかなり筋力が落ちたため、

少し歩くだけで終了。

それでも、リハビリの先生は私の話を丁寧に聞いてくれて、

今の私の体の痛みの状況を分かろうとしてくれた。

その会話の中で私の疑問や症状悪化の原因などが

少しずつ分かってきて、いろいろと腑に落ちた。

この先生のおかげでずいぶん救われたなと、

今は本当に思う。

三日間の寝たきり状態で、元気だった右腕に負担をかけたため、

今度は右腕が疲労してきた。

そして寝たきり状態のため、

今度こそ普通の「ぎっくり腰」になりそうな腰のこわばりを感じるようになった。

「一か所けがをしたら、それをかばうために別の箇所が故障する」

とはよく聞くことだが、

今回は身をもってそれを感じた。

 

まだまだ書きたいことはあるが、

今日はこの辺りで。